地方自治に欠かすことのできない市議会議員について、その任期は何年なのでしょうか。
普段、選挙で投票するとき以外では直接関わることが少ないので、その仕事や任期、任期満了したときのことなどについて、あまりよくご存じない方もいらっしゃるかと思います。
この記事を読むことで、市議会議員の任期が何年かわかるのはもちろん、任期満了以外でいつ議員の身分を失うか、退職金がもらえるのか、といった議員退任に関する全てがわかります。ぜひ最後までお読みください。
目次
市議会議員について
まず、市議会議員とはどのような議員なのでしょうか。その仕事の概要およびその任期について解説していきます。
市議会議員とは?
市議会議員(町の場合は町議会議員、村の場合は村議会議員)とは、市町村の住民からの投票による選挙で選ばれ、市町村の議会で住民の声を市町村の運営に反映させる重要な役目を負っています。
また、市長(町の場合は町長、村の場合は村長)の政策に対して、議会で質問や意見をすることで内容の明確化や改善に繋げていきます。
こうすることで、同じく住民から選挙で選ばれた市長の政策や運営を監視する役割も果たしているのです。
また、ほかにも市議会議員は、住民からの政策などへの意見や要望の受付や、市の条例案(市が独自に定める法律)の提出・審議など、さまざまなことをおこなっており、地方自治において欠かすことのできない重要な存在です。
市議会議員の任期は何年?
市議会議員の任期は地方自治法という法律で定められており、4年間となっています。
なお、任期期間は公職選挙法の定めで、原則として選挙の期日(投票日)から数えて4年間です。
ただし、急な議員の辞職や死去などによる補欠選挙で市議会議員となった場合は、前任者の残りの任期期間を引き継いで議員を務めることになります。
例えば、前任者の任期が残り1年であった場合は、補欠選挙で新たに市議会議員となった方の任期は1年、ということになります。
任期満了以外で市議会議員でなくなるのは?
市議会議員は、原則として任期満了までの4年間、市議会議員を務めることになります。
しかし、実際には、任期満了以外でも議員の身分を失うことがあります。
具体的にどのような場合があるのか、個別に解説していきます。
議会の解散があった場合
議会の解散があった場合は、解散のあったその日に議員の身分を失います。
なお、議会の解散は以下のような場合におこなわれます。
- 選挙権を持つ住民の3分の1以上の署名による解散請求があった場合
- 議会が市長への不信任の議決を行い、それに対して市長が議会の解散をおこなった場合
- 議会が自主的に解散をおこなった場合
なお、実際に行われる解散は2.の場合であることが多いです。
議員自身が不祥事を起こしたとき
議員自身が不祥事を起こしたとき、市民や支持者へ責任を取るかたちで辞任し、議員の身分を失う選択をする場合があります。
市議会議員は、国会議員とは違い、議会の会期中は逮捕されない不逮捕特権などがありません。
仮に不祥事により逮捕されてしまった場合、市議会議員として活動することができなくなり、結果として自分を選んでくれた住民の意見や要望を市の政策や運営に反映させることができなくなってしまいます。
そうなると、議員としての務めを果たすことができないため、辞職を行う決断をする場合があるのです。
なお、逮捕されて裁判で禁固以上の刑罰に処せられた場合は、被選挙権(議員などに立候補したり、務めたりする権利)を失うため、自動的に議員の身分を失います。
議会による処分
議会は、市議会議員に対して除名処分をおこない、議員の身分を失わせることができます。
ただし、この処分をおこなうことができるのは、議会内で議会の運営や秩序に重大な支障をおよぼす場合などに限られています。
例えば、議会内で大きな騒ぎを起こしたり、議長の議事進行をしつこく妨害したりする、といったことが該当します。
したがって、議会外で、議会の運営などにまったく関係のない市議会議員の行動に対して、処分をおこなうことはできません。
例えば、市議会議員が、不倫や脱税などの問題を起こしたとしても、それは議会外でのことであるため、それを理由として議会が除名処分をおこなうことはできません。
市議会議員でなくなるとどうなる?
ここまで、市議会議員の任期や議員の身分を失う場合などについて解説してきました。
では、任期満了などにより市議会議員がその身分を失った場合はどうなるのでしょうか。
その際に退職金などが出るかなども含めて、解説していきます。
議員の退職金は?
市議会議員には、市長と異なり、退職金はありません。
以前は市議会議員共済会による退職金や退職年金がありました。
しかし、2011年6月に法律が改正されて、制度自体がなくなり、改正後に市議会議員となった方には退職金がなくなりました。
退職金がなくなった背景には、各市町村の厳しい財政事情や市民感情を考慮し、高額な退職金を支払うことが適切でないとの判断があります。
そのため、議員の身分を失ったあとは、元々自営業を営んでいたり、ある程度の資産を持っていたりといった場合を除き、まったく収入がなくなるという非常に厳しい状態になってしまうのです。
再選を目指す場合は次の選挙までどうするの?
最後に、任期満了などにより選挙がおこなわれ、それに落選してしまった市議会議員が再選を目指す場合はどうなるのか解説していきます。
落選してしまった議員は、議員の身分を失い、一市民へ戻ることとなります。
そうなった方が、再び選挙で市議会議員になるのは大変なことです。
まず、収入がまったくなくなってしまうため、自分や家族を再び議員になるまで支える収入の道を見つけなければなりません。
議員時代にそれなりの報酬は得ていますが、その報酬は議員としての活動費用にほとんんどが使われており、手元にはほぼ残らない場合が多いです。
多くの場合、アルバイトやパートタイマーなどで収入を得たり、配偶者が働いて支えてもらったり、といった状態になります。
また、次の選挙やそれに備える準備を仕事の合間をぬっておこなわなければなりません。
支援者へのあいさつ回りや講演会の開催、街頭演説、政策実現のための情報収集や勉強などもおこなわなければならず、時間だけでなく多くのお金が必要となってくるのです。
近年は、SNSや動画配信サイトなどのインターネットを通じた政治活動により、ある程度かかるお金を抑えて効果的に自身の考えなどを発信することもできるようになってきてはいます。
しかし、まだまだ選挙活動や政治活動に時間とお金がかかることに変わりはなく、その捻出に苦労される方が多いです。
これらの困難を乗り越え、かつ市民の支持を選挙で得ることができてはじめて、再び議員となることができるのです。
まとめ:市議会議員の任期は4年で退職金はない
市議会議員は、市町村運営に市民の声を反映するために欠かすことのできない存在です。
任期は4年間ですが、議会の解散などにより、任期満了以外でもその身分を失うことがあります。任期満了の場合でも退職金は出ません。
選挙がおこなわれた結果、落選すると再選するまで、政治活動にかける時間やお金の捻出に苦労します。
当選や再選へのハードルは一定ありますが、身近な街をより良くするための仕事ができることが、市議会議員の1番のやりがいです。