皆さんは、日本の国会が衆議院と参議院で構成されている、というのは聞いたことがあるかと思います。
しかし、その2つにどのような違いがあるのか、それぞれの役割はどのようなものなのかについては、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
それらについて解説していきますが、主な違いを表にすると以下のとおりです。
この記事を読めば、定数、任期、被選挙権、選挙制度、役割などの衆議院と参議院の違いに関する全てが分かります。
ぜひ最後までお読みください。
衆議院 | 参議院 | |
定数 | 465人 | 248人 |
任期 | 4年 | 6年 |
解散 | あり | なし |
被選挙権 | 満25歳以上 | 満30歳以上 |
選挙制度 | 小選挙区と比例代表 | 都道府県単位の選挙区と 比例代表 |
議決権限 | 衆議院の優越があり強い | 衆議院より権限が弱い |
内閣不信任 | できる | できない |
目次
衆議院と参議院の定数や任期、被選挙権、選挙制度における違い
衆議院と参議院は、定数や任期、選挙制度などでいくつか違いがあります。
具体的にどのように違うのか、なぜそのような違いがあるのかについて解説していきます。
定数の違い
定数については、公職選挙法の定めにより、衆議院は465人、参議院は248人となっています。
定数が衆議院のほうが多いのは、権限が強い衆議院に、できるだけ多様な国民の意思や意見を反映させることができるようにするためです。
参議院については、定数は少ないものの、都道府県(一部で2つの県で1選挙区としているところもある)から一定数の議員を選出する選挙制度になっているため、人口の少ない地方の民意を反映させやすくなっています。
任期の違い
任期については、憲法の定めにより、衆議院が4年間、参議院が6年間となっています。
衆議院のほうが任期が短い上、衆議院の解散がおこなわれた場合、任期途中でも失職し、選挙による議員の入れ替えがおこなわれます。
そのため、直近の民意を反映させやすいといえます。
対して、参議院は任期が長く、また、任期途中での解散もないため、中長期的な視点で、より成熟した議論をおこないやすいです。
なお、参議院は3年ごとに半数の議員が改選となるため、衆議院のように一挙に全議員が選挙で入れ替わることはありません。
被選挙権の違い
被選挙権(選挙に立候補する権利)は、公職選挙法の定めにより、衆議院が満25歳以上、参議院が満30歳以上となっています。
参議院のほうが年齢基準が高くなっているのは、参議院では成熟した議論がおこなわれることを期待されており、さまざまな経験や知識を身につけた、ある程度年齢を重ねた者を議員とすることを想定しているからです。
選挙制度の違い
衆議院と参議院には選挙制度に大きな違いがあります。
衆議院:小選挙区制と比例代表制(小選挙区定数289人、比例代表定数176人)を併用した選挙制度
参議院:選挙区制と比例代表制(選挙区定数148人、比例代表定数100人)を併用した選挙制度
具体的にどのような違いがあるのか、それぞれ解説していきます。
小選挙区制度と選挙区制度
まず、衆議院の小選挙区制については、人口を考慮し、1票の格差が2倍未満となるように、全国に選挙区を設けています。
その選挙区で最も多く票を獲得した候補者を当選させる選挙制度です。
この制度では、多数派の民意を受けた候補者に多くの票が集まり当選しやすいです。
反面、少数派の民意を受けた候補者は当選しにくいです。
このため、政権が安定しやすいものの、少数派の民意が政治に反映されにくいといえます。
ちなみに、1票の格差とは、人口が最も多い選挙区と最も少ない選挙区で、
当選するために必要な得票数にどれだけ差があるか、というものです。
例えば、有権者数が100人のA選挙区と有権者数10人のB選挙区があり、両選挙区とも2人の候補者がいたとします。
有権者全員が投票したとすると、当選に必要な最低票数は、A選挙区では51票、B選挙区では6票となり、同じように1人を選ぶのに、必要な票数に大きな差が出てしまいます。
結果、両選挙区では1票の価値に8.5倍の場合の差が生じてしまうのです。
完全に1票の格差をなくすことは困難なため、なるべく格差が少なくなるように選挙区を設けているのです。
次に、参議院の選挙区制度は、衆議院と違い、都道府県を単位として選挙区がもうけられています。 なお、人口が少ない鳥取県と島根県、高知県と徳島県を1ずつとして数えています。
その代わり、人口の多い都道府県には複数の議席が配分されており、当選者が複数出る都道府県もあります。
なぜこのような制度になっているかというと、参議院は、各都道府県から代表を選ぶことで、地方の民意を反映させやすくしているためです。
そのため、1票の格差は衆議院より大きくなる傾向があります。
過去には最大約6倍の格差があったこともありますが、定数見直しなどにより、直近の2019年7月の参議院選挙では最大3倍に改善されています。
衆議院と参議院の比例代表制の違い
衆議院と参議院ともに、比例代表制も合わせて採用しています。
比例代表制は、政党名での投票をおこない、各政党の得票数に応じて議席を配分する制度です。
そのため、死票(落選した立候補者の票、つまり無駄になってしまう票)が少なく済み、少数派の民意を反映させやすいという利点があるのです。
ただ、衆議院と参議院では、①選挙区の違い、②立候補者名での投票ができるか、③選挙区と比例代表両方に立候補できるか、という3つの違いがあります。
①選挙区の違い
衆議院では全国を11のブロックに分けるのに対して、参議院では全国で1つの選挙区となります。
②立候補者名での投票ができるか
参議院ではおこなうことができますが、衆議院ではおこなうことができません。
なお、立候補者名で投票した場合は、政党ではなくその立候補者自身の票となります。
立候補者名での投票ができない衆議院の方式を、拘束名簿式といい、立候補者名での投票ができる参議院の方式を非拘束名簿式といいます。
③選挙区と比例代表両方に立候補できるか
衆議院はできるますが、参議院ではできません。
そのため、衆議院では、小選挙区で落選しても比例代表で当選する、ということもあります。
衆議院と参議院の持つ権限の違い
衆議院は参議院に比べて、任期が短く解散もあるため、民意を反映させやすいと考えられることから、憲法の定めにより、より強い権限が与えられています。
これを衆議院の優越といいます。
では、具体的に、衆議院と参議院に与えられているそれぞれの権限の違いについて解説していきます。
主な議決における権限の違い
まず、予算案については、衆議院が先に議論をおこなう権利(先議権)があります。
さらに、予算案や条約の承認、内閣総理大臣の指名などの議決は、衆議院と参議院で議決が異なった場合には、両院協議会により両院の意見の調整がおこなわれますが、調整できなかったときは衆議院の議決が優先されます。
また、法律案については、衆議院で可決され参議院で否決された場合、衆議院で出席議員の3分の2以上の賛成で再議決されれば、衆議院の議決が国会の議決となるのです。
内閣不信任決議と問責決議の違い
衆議院については、憲法の定めにより、内閣を支持しない旨の内閣不信任決議をおこなう権限があります。
衆議院が内閣に対して不信任の決議をおこなうと、内閣は不信任決議後10日以内に衆議院を解散するか、総辞職をしなければなりません。
対して、参議院は、内閣に対してその責任をとるように求める問責決議をおこなうことができます。しかしこれには法的拘束力がなく、この決議を内閣が無視しても法律上は特に問題ありません。
ただし、参議院での議決の協力が得られにくくなり、国会運営に支障が出る可能性はあります。
衆議院と参議院、それぞれの役割の違い
ここまで衆議院と参議院の違いについて解説してきました。
ここからは、それらの違いがどのように「役割」の違いに表れているか、ここまでの内容のおさらいもしつつ解説します。
衆議院の役割
衆議院は、任期が短く解散もあるため、最新の民意を反映しやすいです。
この衆議院に強い権限を与えることで、より民意に近い議決がおこなうことができます。
このことから、国民の求めていることをスピーディーに国の政治に反映することが、衆議院の役割といえます。
ただ、その分その時の世論に流されやすく、長期的な視点で慎重に議論を行うことは参議院に比べると苦手です。
参議院の役割
参議院は、任期が衆議院より長く解散がないため、長く安定して議員を務めることができ、衆議院よりも中長期的な議論をおこないやすい環境であるといえます。
衆議院と異なる任期にすることで、違う時期の国民の意思や意見を反映させることも可能となります。
衆議院だけでなく、参議院でも議論を行うことで、より慎重な予算案や法律案の審議を行うことができるのです。
また、衆議院の解散中に国会の機能をまひさせないようにする、という役割も担っています。
まとめ:衆議院のほうが民意を反映させやすく、強い権限がある
衆議院は任期が短く、解散もあることから、リアルタイムな民意が反映できます。
参議院は、任期が長く解散もないため、中長期的かつ慎重な政策の議論をおこなうことができます。
参議院は、任期が長く解散もないため、中長期的かつ慎重な政策の議論をおこなうことができます。衆議院は参議院と比べて、法律案や予算案の議決、内閣不信任決議などで、強い権限が与えられています。