政治家と官僚の違いって何なの?関係性を分かりやすく解説

どちらも政治に関わっている政治家と官僚。普段ニュースを見ているとなんとなく同じに見えてしまうかもしれません。しかし、政治家と官僚にはなり方や立場に明確な違いがあります。

「政治家は官僚の言いなりで、結局のところ政治は官僚が動かしている。」そのような内容の記事を目にしたりしたことがあるかもしれません。実際はどうなのでしょうか。

この記事を読むことで、なり方・立場など政治家と官僚の詳しい違いや、両者の複雑な関係性についてわかりますので、是非最後までお読みください。

政治家と官僚になるまでの過程の違い

政治家と官僚の大きな違いはなり方です。政治家は国民から選ばれてなる一方で、官僚は厳しい試験に合格してなります。官僚は東大卒などの高学歴エリートが多くを占めるのに対し、政治家は様々なバックグラウンドを持つことが多いのが特徴です。

政治家のなり方

政治家には、「選挙」という一大イベントを経てなります。

当然ながら素人が何の準備もせず選挙で当選できるものではありません。政治家になる最も多いパターンは、親や親戚に既に政治家がいて、その秘書として働きながら選挙のノウハウや実務を学んでいくというものです。「二世議員」「世襲議員」と言われたりもしますが、全体の30%から40%あたりを占めます。

一方で、元官僚や民間企業、研究所などでの勤務経験を持ち、満を持して出馬する人も多くいます。芸能人が政治家に転身した話を耳にされた方も多いと思います。

学歴や試験結果に関係なく、選挙で当選すればなれることから、様々なバックグラウンドを持つ政治家がいるわけです。

官僚のなり方

官僚になるためには誰しもが通らなければいけない門があります。毎年実施される「国家公務員試験」、特に「総合職(旧・国家Ⅰ種)」試験を受検、合格しなければなりません。国家試験の中でも最難関といえ、区分等によって倍率は3~9倍、東京大学などの名門大学出身者が合格者名簿に名を連ねます。

しかし、ここで終わりではありません。試験を突破した者を次に待ちうけるのが「官庁訪問」。官庁訪問とは一言で言えば、「自分の行きたい官庁から内定を出してもらうために、自分をPRすることを目的としてその官庁に訪問すること」です。民間企業の面接と基本的には変わらないと思ってもらって良いでしょう。

ただし、大変な試験を突破してもこのタイミングで落とされる場合もあるため、それをクリアしてやっと官僚になることができます。

政治家と官僚の立場の違い

政治家という立場

選挙で民衆によって選ばれ、直接国会に出席し、法律の制定にまつわる採決そのものに参加する権利があるのが政治家です。

政治家が働く国会では年間で200件以上の法案が提出されます。それらを審議し、法案を可決すべきかどうかを判断しなくてはなりません。政治家の肩には一人5万票はくだらない「民意」が乗っています。そのため政治家の責任は重大で、「民意」を代弁するためにも、真剣にを議論しなくてはなりません。

そして、与党となった政党の政治家は議会での仕事と同様に行政の仕事もこなさなくてはなりません。ニュースでよく見る内閣というのは、「内閣総理大臣」を筆頭にそれぞれの大臣(閣僚)で構成される組織で、閣議において内閣の重要な政策に関する方針やその他の案件を発議することができます。

その内閣によって、政治家は大臣の下にいる官僚組織に命令を下します。そのため、政治家にとって官僚は「部下」であるとも言えるのです。

官僚という立場

官僚は「公務員」という大きなくくりの中での上級クラス、いわゆるキャリア組にあたります。政治家が決めた「法律」に基づき、国の行政に関する様々な実務を遂行する立場にあります。

前述の通り、法律がつくられるのはあくまで「政治家で構成される国会」です。官僚の一存だけで何かが制定されるわけではありません。官僚は政治家の「部下」として政治家に提案をします。

しかし、国会で可決される法案の多くは官僚から提案されたものなので、官僚の仕事は責任重大です。官僚一人が何かを変えるような事はありませんが、官僚の会議で決まった決定は政治家が反対しなければそのまま通る事になります。

政治家も官僚の動き全てを把握はできないので、細かい決めごとは特に官僚に任せなければなりません。このことから、「政治家は官僚の言いなりだ。」と批判される事もしばしばあるのです。

政治家は官僚の言いなりはウソだった!?政治家と官僚の関係とは

官僚が政治家を影で操っているというのはウソ?

巷では、「官僚が政治家を操っている」「政治家は官僚の言いなり」であると言われる事があります。

確かに、超難関の試験を突破してくる官僚はとても優秀で、しばしば政治家より頭がキレるのは事実です。

加えて、政治家に様々な提言をおこない、資料を作成して提出するのは官僚の仕事です。政治家は秘書などが独自に入手した情報を除き、それに基づいて判断を下すことになります。

官僚から情報を受け取って判断するため、官僚の良いように言いくるめられて「言いなり」「影で操っている」というイメージが作り出されてしまっています。

しかし、だからといってそれが「言いなり」に直結するとは限らず、選挙で「民意」を受けた政治家に対しては官僚も配慮をしなければなりません。政治家と官僚は良くも悪くも密接な関係にあるとだけ言えるでしょう。それゆえどちらが上から下かというのは難しく、複雑な関係にあります。

民主党政権で進められた「政治主導」

かつての政権交代で、政治家と官僚の間に制度的な変化が起こったこともありました。2009年に民主党が政権交代を果たした時のスローガンは「政治主導」。

事務次官(各省庁の官僚側のトップ)会議や政調会議を廃止し、政務三役と呼ばれる大臣・副大臣・政務官を霞が関に送り込みました。民主党政権はその後自民党に代わりましたが、現在でもその爪痕は残っています。

また、最終的には2014年まで設置が持ち越されたものの、官僚人事の一元管理を目指して「内閣人事局」が発足、現在、国家公務員の人事管理を担う組織として、関連する制度の企画立案、方針決定、運用を一体的に担っています。

実は政治家の言いなり!?政治家の「無茶ぶり」に振り回される官僚

「官僚なんて呼べばすぐ来るから。」・・・というのは、ある政治家が、国会事務所(議員会館のこと)にて新人秘書に実際に言った一言。もちろん、政治家が呼ばなくても常日頃から、官僚側から政策案に関する説明の申し入れがあり、政治家側が時間を取ってこれに応じます。

しかし、これには当然というべきか、逆パターンも存在します。つまり、政治家が「○○案について説明が欲しい」などの申し入れがあれば、官僚はそれに関する資料を携え、無ければ作り、時に自身の仕事を中断して説明にやって来なければなりません。

その他にも、政治家から提出されれば期限内に回答しなければならない質問主意書なるものも存在し、官僚にとっては、ただでさえ忙しいのに「勘弁して欲しい」現状さえあるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。政治家と官僚の関係は、議会と行政という点で違った仕事内容ではありますが、ひとたび政権を取った与党政治家と官僚の関係は「上司」と「部下」という関係になります。

しかし、政治家が細かい物事を見られない分、官僚の方が力が強いのではないかと批判され、その中で政治家と官僚の関係や権限も見直されてきました。

確かなことは、どちらが一方的に優位な立場に立ち続けることはなく、協力し、時に対立する。官僚たちは心強いブレーンとなって政治家を支え、政治家は国会という重要な局面で様々な決定を下します。

お互いになくてはならない存在であり、国とその国民のため、数々の政策を実現へ向けて推し進めていくという点で、彼らの視線は常に同じ方向を向いているのです。