私たちの税金から支払われている政治家の給料は高すぎる、減らせ、という声をよく耳にします。
年収約2100万円といわれる政治家(国会議員)の給料と政治活動にかかる経費について実際はどのようになっているか分からないことも多いですよね。
国民の税金が適切に使われているかチェックするのは私たち有権者の役目でもあるので、政治家の給料はどうやって決まっているのか、実際に政治家はどのように給料を使っているのかを知りたい方はぜひ最後までお読みください。
目次
国会議員と地方議員の年収、世界の中での給料ランキング
国会議員の1年間の給料は約2100万円!
国会議員の給料は、「歳費」と呼ばれています。歳費は法律で定められており、国会議員の歳費に関しては、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」などで決まっています。
初めの第一条に書かれているのが、いわゆる基本給、「歳費月額」についてです。役職などに付いていない国会議員は、月額で129万4000円、1年では1552万8000円となります。
また第十一条の二などにおいて、いわゆるボーナス、「期末手当」を定めています。法律で定められている通りに計算を行うと、現在は約600万円が支給されています。
「歳費月額」と「期末手当」、これらを合わせた約2100万円が、国会議員の年収となります。
もちろん国会議員も国民なので、歳費と期末手当(ボーナス)には税金がかかります。
ちなみに、国会議員の歳費は税金から支払われているというのは、憲法第49条「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」という定めによるものです。
地方議員の給与は自治体によって大きな差がある
地方議員の給料(議員報酬)は、各自治体の条例により定められています。
条例は法律とは異なるので、同じ「地方議員」という立場でも、支払われる議員報酬の額は自治体によってかなり差があります。これに国会議員と同様、期末手当と呼ばれるボーナスが加わります。
例えば、都道府県という枠組みで比較すると、東京都議会の議員の給料は月額102万2000円、期末手当は年間で約400万円ですが、沖縄県議会の議員の給料は月額75万円、期末手当は約221万円です。(平成30年度時点)
このように自治体によって給料や期末手当の額は異なります。
世界と比較した日本の政治家の年収ランキング
日本 |
約2100万円 |
アメリカ |
約1570万円 |
カナダ |
約1260万円 |
ドイツ |
約1130万円 |
フランス |
約1100万円 |
イギリス |
約970万円 |
韓国 |
約800万円 |
国によって政治家の年収には大きな差があります。例えば、韓国と比べると日本の政治家は約2.75倍もの額をもらっていることが分かります。
物価や平均年収も様々であり、年収以外の手当や、必要な支出も国により異なるので、年収だけを比べて一概に日本の政治家の給料が高すぎると言えるわけではありません。
給料以外にも政治家に支払われるお金がある
給料だけで約2100万円ももらっている政治家ですが、政治家は給料以外にもたくさんの手当を受け取っています。ここでは、どのような手当を受け取っているのか、細かく見ていきます。もちろん、これらも税金から支払われています。
1:文書通信交通滞在費
月額100万円
(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 第九条)
議員としてさまざまなやりとりをする上で、郵便料金や電話代、インターネットの費用が必要となります。
文書通信交通滞在費(通称:文通費)は歳費や期末手当と違い、非課税であることが第九条で明記されています。
2:立法事務費
月額65万円
(国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律)
国会議員が法律をつくるに当たって必要となる調査や研究を行うための費用です。これは衆参両議院の各会派に対し、会派所属議員の数に応じて支給する仕組みとなっています。
ただし国会議員一人であっても会派として認められれば支給されます。
3:議会雑費
役員や委員長などの役職者に日額6000円
(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 第八条の二)
国会の開会中に、正副議長や常任・特別委員長などの特別な役職に就いている議員に支払われます。これは出席の有無にかかわらず開催日数分支給されます。
4:JR特殊乗車券、国内定期航空券
無料のJR乗車券もしくは航空券
(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 第十条)
国会議員は、国会会期中は東京にいる必要があります。また自分が選出された地元に戻り、有権者の声を聞いたり、視察に行ったりなどの議員活動も行う必要があります。その際に発生する地元と東京の交通費として支払われます。
5:公設秘書の給料
約1800万~3000万円以上(年額)
(国会議員の秘書の給与等に関する法律など)
国会議員は公設秘書という秘書を3人まで持つことが出来ます。勤務年数にもよりますが1人当たり概ね600万円から1000万円程度です。
これが3人なので、約1800万~3000万円が支給されることになります。
6:その他
その他にも公務での旅費や、公務上の災害に対する費用などがあります。
上記の6つなどを含めると、国会議員が1年間で給料以外に手にするはお金は少なくとも3780万円以上です。
収入も高額だが、支出も多すぎる政治家の懐事情
政治家は給料から多くの経費を支払っている
国会議員には文通費や交通費、公設秘書給料以外にも様々なお金が支給されていることが分かりましたね。
ここである疑問が浮かびます。「議員活動に必要なお金をたくさん支給されているから、もっと基本給を減らせるのでは?」
実は、国から支給されるお金ではカバーしきれない政治活動費用があります。
例えば、私設秘書の給料です。公設秘書は3人雇えると法律で定められていますが、3人で多種多様な秘書の仕事をすべてこなすのは大変です。そのため、多くの議員が給料=約2100万円からお金を出し「私設秘書」を雇っています。
日本のサラリーマンの平均年収約400万円を私設秘書一人当たりに支払うとすると、私設秘書を3人雇っただけで、約1200万円が年収2100万円から引かれることになります。それだけで手取りの年収は半額以下の約900万円になります。
また、選挙活動のためのお金も必要です。選挙に出馬する際には、国会議員の場合、供託金という最低でも300万円の費用を支払います。これは落選すると没収されるお金です。選挙のための事務所やスタッフといった選挙活動に関する多額の費用は、議員が自腹で負担しなければなりません。
給料年収2100万円の実態
こうしてみると政治家の年収約2100万円という額すべてを政治家が自由に使えるわけではないことが分かります。しかし、歳費以外の手当の中には法律で使途の公開が明記されていないものもあります。
文通費(郵便料金や電話代、インターネットの費用等)や立法事務費(法律をつくるに当たって必要となる調査や研究を行うための費用)がそれにあたります。そうした費用から私設秘書を雇う費用にしたり、自分の給料に上乗せしたりすることも出来てしまいます。
給料から政治活動の費用を支払うと手取りは2100万円を下回りますが、文通費や立法事務費などから経費を流用している場合も考えられます。
そうした政治資金の不透明さを脱却するために、各議員の文通費を公開している政党もあります。
まとめ
政治家の年収は、基本給月額で129万4000円と年間のボーナス約600万円の合計で約2100万円です。
また、給料以外に政治活動にかかるお金として最低でも約3780万円以上支給されています。
世界の政治家、サラリーマンの平均年収と比較しても、日本の国会議員の給料ははるかに高額に感じます。一方で、議員が政治活動する上で私設秘書やスタッフを雇う為の人件費、地元選挙区での活動の費用など多額のお金が必要なこともあります。
年収2100万円とだけ聞くと多く聞こえますが、2100万円全てを自由に使えるわけではなく、年収が高いからといって全ての政治家がお金持ちというわけではないということです。