「衆議院選挙って誰でも立候補できるのかな?」
そんな疑問をお持ちではないでしょうか?
ここ最近、芸能人が立候補している姿をよく見かけます。また、若い実業家から特に目立った肩書きを持っていない人までさまざまな人が立候補しています。そんな様子を見ていると、衆議院選挙に立候補する条件が一体何なのか気になってきますよね。
そこで今回は、衆議院選挙へ立候補するための条件から立候補する方法や費用まで、わかりやすく紹介します。この記事を読めば、衆議院選挙に誰が立候補できるのか、どうやって立候補するのかなど、衆議院選挙に関する気になる疑問が全てクリアになります。ぜひ参考にしてください。
目次
衆議院選挙の立候補に必要な3つの条件
「なんだか難しそう・・・」
そんなイメージがある衆議院選挙への立候補。でも実は、立候補するための条件は次の3つしかありません。
- 日本国民であること
- 満25歳以上であること
- 供託金を預けられること
衆議院選挙への立候補が許されているのは日本人だけ。外国人の方が立候補している姿は見たことがないと思います。
年齢は満25歳以上と決められています。投票日に満25歳以上であればOKなので、立候補するときはその年齢を下回っていても問題ありません。
「供託金」は、選挙に立候補する人が法務局に預けるお金です。詳しい金額は下で説明しますが、衆議院選挙に小選挙区で立候補するときは300万円必要になります。もし一定の票が集まらなかった場合、供託金は没収されてしまいます。
衆議院選挙に立候補できない条件
上で紹介した3つの条件をクリアしても、下の項目のどれかに該当する人は立候補することができません。
- 禁錮刑以上の処罰を与えられて、まだその執行が終わっていない人
- 禁錮刑以上の処罰を与えられて、その執行を受けることがなくなるまでの人(執行猶予中の人は除く)
- 公職(公務員や議員)の間に収賄罪を犯して、その実刑期間が経過したあと10年経っていない人。もしくは執行猶予中の人
- 選挙に関係する犯罪を犯して禁錮刑以上が与えられ、その刑の執行猶予中の人
- 公職選挙法などで定められている選挙関連の犯罪を犯して、選挙権、被選挙権が停止されている人
- 政治資金規正法で定められている犯罪を犯して、選挙権、 被選挙権が停止されている人
この6つの条件を、「消極的要件」と言います。
衆議院選挙の立候補に必要な費用
衆議院選挙に立候補するためには、ある程度お金が必要です。
ここではどんな費用が必要なのか見ていきましょう。
選挙の種類によって異なる供託金
「衆議院選挙の立候補に必要な3つの条件」で紹介したように、衆議院選挙に立候補するためには供託金が必要です。
衆議院選挙の供託金は、選挙制度ごとに下のように決められています。
小選挙区選挙は立候補者が、比例代表選挙は政党や政治団体が名簿登録者の人数に応じて供託金を預けます。
選挙制度 | 供託金 | 供託金の没収条件や没収金額 |
小選挙区 | 300万円 | 有効投票総数の10分の1に満たない場合はすべて没収 |
比例代表 | 600万円 × 名簿登録者の人数 (重複立候補者については1人300万円) | 没収金額 = 供託金 – ( 600万円 × 比例代表で当選した人数 × 2 + 300万円 × 重複立候補者のうち小選挙区で当選した人数 ) 得票数に関係なく、上記計算式に当てはまる金額が没収される |
供託金以外で必要になる選挙費用
衆議院選挙に立候補しようと思うと、供託金以外にもさまざまなお金が必要になります。大阪府が発表した平成29年10月の衆議院小選挙区選挙運動収支報告書によると、供託金以外の支出は立候補者1人あたり約580万円となっています。(※1)
必要費用の代表的なものとして、人件費があります。ポスター貼りやハガキ作成などの事務作業から選挙カーの運転まで、選挙活動には多くの人の協力が不可欠です。その人たちに支払うお金が発生します。先ほど同様、大阪府発表の平成29年10月の衆議院小選挙区選挙運動収支報告書を見てみると、候補者ひとりあたりの平均金額は約60万円です。(※1)
また、選挙事務所を構える場合はその費用もかかります。賃貸料や光熱費、インターネット回線の開通費用などが必要です。平成29年10月の衆議院小選挙区選挙における福島県の収支報告書を見ると、約10〜200万円と候補者によってバラツキがあります。(※2)ここ最近は選挙費用を抑えるために、自宅を事務所として使う人も増えてきています。
その他にも、チラシの印刷代や食費、選挙看板の広告費など、さまざまな費用がかかります。
※1 参照元・・・平成29年10月22日執行衆議院小選挙区選出議員選挙収支の状況(収支の部)(大阪府)
※2 参照元・・・平成29年10月22日執行衆議院小選挙区選出議員選挙選挙運動費用収支報告書の要旨(福島県)
衆議院選挙に立候補する方法は?
衆議院選挙に立候補するためには何をすればいいのでしょうか?
ここではその具体的な方法を確認していきます。
衆議院選挙へ立候補する届出を提出
衆議院選挙に立候補する場合、立候補の届出を提出します。立候補届は3種類あります。
1. 本人届出
立候補する本人が選挙長に提出する届出。この届出は、小選挙区選挙へ立候補する場合に使うことができます。比例代表選挙では使用できません。
2. 政党届出
政党や政治団体が出す届出。小選挙区選挙と比例代表選挙の両方で使える届出です。
3. 推薦届出
選挙権を持っている人が、候補者として推薦したい人を届け出る形式。本人の承諾を得た上で選挙長に提出します。小選挙区選挙で使用できます。
供託金を法務局に預けなければいけない
立候補者は供託金を法務局に預ける必要があります。金額は上で説明したとおりで、選挙制度ごとに異なっています。
預けた供託金は、選挙が終わったあとに返ってきます。しかし、決められた票を集めることができなかった場合や立候補を辞退したときは没収されます。没収されたお金は国のものになり、税金のように使われることになります。そのほかの選挙も同様で、国政選挙であれば国のものに、地方自治体の選挙であればそれぞれの都道府県や市区町村のお金として扱われます。
供託金は、当選するつもりのない人が立候補することを防ぐためにあります。票が集まらないと供託金が没収されてしまうので、真剣に選挙活動しないと損をします。そのため、供託金には売名のために立候補するような人を減らす効果があるのです。
衆議院選挙立候補の届出をできる期間
衆議院選挙への立候補の届出は、いつでも好きなときにできるというわけではありません。届出が可能なのは、選挙の公示があったその日だけです。時間は、平日でも休日でも午前8時30分~午後5時の間となっています。
なお公示は、衆議院選挙の場合は選挙期日前の少なくとも12日前までに、参議院選挙の場合は17日前までに行われます。
衆議院選挙立候補の禁止事項と制限事項
衆議院選挙では重複立候補が禁止されています。重複立候補とは、ある選挙で立候補した人が、同時に他の選挙へ立候補することです。例えば、衆議院選挙に立候補しながら市長選挙にも立候補する、ということはできません。ただし、衆議院選挙において、小選挙区制度と比例代表制度へ同時に立候補することは問題ありません。
また、当然ながら被選挙権がない人の立候補は禁じられています。
被選挙権は、下の3つを満たしている場合に与えられる権利です。
- 日本国民であること
- 満25歳以上であること
- 消極的条件に該当していないこと
衆議院選挙の立候補を辞退する方法
立候補したあとに選挙への出馬を取りやめることは可能です。
ただし、立候補の届出期間中、つまり選挙公示日の午前8時30分~午後5時の間にのみ辞退することができます。公示日が過ぎてしまうと、いくらやる気がなくても選挙が終わるまで辞退することができないというルールになっています。
比例代表選挙の場合は、選挙期日の10日前までに届け出れば、政党や政治団体は名簿の取り下げができます。
ただし、立候補を辞退した場合、法務局に預けた供託金は全額没収されますのでご注意ください。
衆議院選挙の立候補者が異動する場合
候補者の異動があった場合は、立候補届の却下や比例代表の候補者名簿からの削除などの処理が行われます。
異動の発生には下のようなケースが考えられます。
- 立候補したあとに被選挙権を持っていないことが判明する
- 不幸なことに立候補者が死亡してしまう
衆議院以外の選挙に立候補する条件
衆議院選挙への立候補について紹介してきましたが、選挙には他にもさまざまな種類があります。
ここでは衆議院以外の選挙に立候補する条件も見てみましょう。
選挙 | 立候補する条件 |
参議院議員 | ・日本国民であること ・満30歳以上であること ・供託金300万円を預けられること |
都道府県知事 | ・日本国民であること ・満30歳以上であること ・供託金300万円を預けられること |
都道府県議会議員 | ・日本国民であること ・満25歳以上であること ・その都道府県議会議員の選挙権を持っていること ・供託金60万円を預けられること |
市区長 | ・日本国民であること ・満25歳以上であること ・政令指定都市の市長選挙は供託金240万円、その他の市区長選挙は供託金100万円を預けられること |
町村長 | ・日本国民であること ・満25歳以上であること ・供託金50万円を預けられること |
市区町村議会議員 | ・日本国民であること ・満25歳以上であること ・その市区町村議会議員の選挙権を持っていること ・政令指定都市の市議会議員選挙は供託金50万円、その他の市区議会議員選挙は供託金30万円を預けられること。町村議会議員選挙は供託金が不要。 |
まとめ
衆議院選挙に立候補する条件はたったの3つしかありません。①日本国民であること、②満25歳以上であること、③供託金を預けられること、この3つだけです。
しかし、これらの条件を満たしていたとしても、「衆議院選挙に立候補できない条件」で触れた消極的要件に1つでも当てはまるものがある場合は立候補できません。
選挙費用は、供託金に加え、選挙活動を行う上で必要な人件費や諸経費が発生します。この費用を準備することが立候補する上で一番難しいポイントだと言えます。
政治への関心が薄い人にその理由を聞いてみると、多くの人が「よくわからないから」と答えます。衆議院選挙への立候補する条件や方法についても、難しそうなイメージを持っている人は多くいます。
しかし、この記事を読んで、1つずつ確認すればとても簡単で誰でも理解できるということをわかって頂けたのではないかと思います。もし何か疑問に思うことが出てきたら、ぜひ一度そのことについて調べてみてください。政治は、知れば知るほど楽しくなっていきます。