与党と野党の違いをたった3つのポイントで完全理解!

「与党」と「野党」という言葉を政治のニュースで良く耳にするかと思いますが、両者の詳しい違いをご存じでしょうか?

この違いのポイントは、「役割」・「構成」・「政策」の3つです。

「与党」と「野党」でどう違うのか、この記事で簡単に分かります。

さらに、衆議院と参議院との違いを含めた国会内での関係性についても、あわせて説明します。

ポイント1:役割の違い

第一のポイントとして、与党と野党の役割に着目して説明します。

ここでは、政権側の政党であるかどうかが重要な要素となります。

与党の役割

与党とは、政権に味方している政党のことになります。

日本でいえば、内閣総理大臣の所属している政党と、その政党と連携している政党のことです。

内閣総理大臣は、国会からの指名で選ばれるので、普通は国会で過半数の議席を持つ政党のリーダーが総理大臣となります。

過半数に届く政党がない場合は、いくつかの政党が一緒に政権を作る約束(連立)をして、それらの政党のリーダーの誰か(多くの場合は最も議席の多い政党のリーダー)が内閣総理大臣となります。

つまり、与党は国会における多数派の政党であり、政権側の政党という立場から内閣の政策を支持し、政権運営を安定させる役割を担っています。

野党の役割

野党とは政権を担当していない政党であり、そのため政策への影響力は与党より小さいです。

また、野党は政権側ではないゆえに、現行の内閣に行政を任せられないと判断したときは内閣不信任案を出すことができます。

与党が政権運営を安定させるという役割を持つのに対し、野党は政権の政策を監視し、その暴走を防ぐという役割を持っています。

すなわち、野党は与党の掲げる政策に対して意見し、政策をより良いものにすることを目的としています。

ポイント2:構成の違い

続いて、与党と野党の違いについて、それぞれの構成の観点から説明します。

与党の構成

現在の日本の与党の構成は、以下の通りです。

自由民主党衆議院285議席参議院113議席
公明党衆議院29議席参議院28議席

現在は衆議院と参議院ともに、与党の議席数が圧倒的に多く、与党が優勢な状態です。

過去の与党の構成を見ても、自由民主党が与党の第一党である場合が多く、自由民主党の政策が国民から評価されていることがわかります。

自由民主党に加え、公明党などと連立政権を構成するケースが一般的です。

野党の構成

現在の日本の野党の構成は以下の通りです。

日本維新の会衆議院11議席参議院16議席
立憲民主党衆議院55議席参議院32議席
国民民主党衆議院38議席参議院23議席
日本共産党衆議院12議席参議院13議席
社会民主党衆議院2議席 参議院2議席
れいわ新選組衆議院0議席参議院2議席
NHKから国民を守る党衆議院0議席参議院1議席

現在は与党と比べて有力な野党がなく、野党が乱立している状態となっています。

野党の特徴として、日本共産党以外はかなり頻繁に構成が変化します。

例えば、れいわ新撰組やNHKから国民を守る党は2019年の参議院議員選挙から初めて議席を獲得した党です。

このように構成が頻繁に変化する理由は、与党と比較して野党の政党は組織としての盤石さに欠ける傾向にあるからです。

後述するように、野党は思想を前面に押し出した政策を掲げる傾向にあり、安定的な政策の多い与党と比べて極端な政策が多くなりがちです。政策が極端であるがゆえに、政治思想を共有し政党を組むときに安定感に欠けることがあります。

そのような背景もあり、野党内には自由民主党のような影響力のある政党が存在しないのが現状です。

ポイント3:政策の違い

与党各党の主な政策

主な与党各党の政策は以下の通りです。

与党の政策は、野党よりも行政上の観点からの政策であるという傾向があります。

例えば、野党は民意に即して増税反対という意見が多いですが、与党は行政における必要性から増税賛成という政策になっています。

自由民主党

憲法改正:賛成派、自衛権明記を主張

消費税:増税賛成派

社会保障:人生100年時代にふさわしい制度構築、低所得者ににする念願最大6万円の給付金支給、年金支給時期の選択肢拡大

公明党

憲法改正:賛成、ただし現在の憲法への条文追加による改正

消費税:増税賛成派

社会保障:低年金者支援金の拡大、認知症対策や治療への研究開発支援拡大

野党各党の主な政策

主な野党各党の政策は以下の通りです。

野党の政策は、与党のように必要性からくる政策というよりは、政治思想からくる政策になります。

政治思想とは、例えば、憲法9条の改正を断固として拒否するといったものです。

そのような政治思想は、時として理想論となってしまうのが難点です。

しかし、政権側として掲げづらい政策も掲げることができ、多角的な視点から意見が出るというメリットもあります。

日本維新の会

憲法改正:賛成派、自衛隊明記主張、地方分権推進

消費税:増税反対派

社会保障:年金を積み立て方式へ移行、年金支給年齢引き上げ、医療費の見直しと効率化

立憲民主党

憲法改正:どちらかといえば賛成派、ただし自衛隊の明記は消極的

消費税:増税反対派

社会保障:年金の最低補償金額強化、医療と介護については所得額別に自己負担額を設ける

国民民主党

憲法改正:どちらかといえば賛成派、ただし自衛隊の明記は消極的

消費税:増税反対派

社会保障:低所得年金者に最低月5000円給付額増加、パートやアルバイトでも厚生年金に加入できるようにする

共産党

憲法改正:反対派

消費税:増税反対派

社会保障:物価に連動する年金制度や高額所得者への年金見直し、国民保険料引き下げ

社会民主党

憲法改正:反対派

消費税:増税反対派

社会保障:物価に連動する年金制度見直し、支給年齢引き上げ反対、医療と介護の自己負担額増加反対

衆議院・参議院の違い

ここまでで与党と野党の違いについて3つの観点から説明しました。

ところで、国会中継を見ていたり、国会のニュースを読んでいたりすると、与党・野党以外にも衆議院・参議院という言葉もよく耳にします。

衆議院・参議院も各政党の議員で主に構成されており、与党・野党という言葉と混同されている方もいらっしゃいます。

そこで、以下では、衆議院・参議院の違いについても解説します。

国会内での与党・野党・衆議院・参議院それぞれの関係についてしっかりと理解していきましょう。

与党・野党とあわせて耳にする衆議院・参議院とは?

あらかじめ言っておきますと、与党と野党、衆議院と参議院は全くの別物です。

ここからは、一旦、与党と野党は忘れて衆議院と参議院の話に集中しましょう。

日本の国会は二院制を採用しており、この二院というのが衆議院と参議院です

衆議院と参議院はそれぞれ別々に議案に対して検討をします。そのうえで両院の意見が合ったら、国会として結論が出たということになるのです。

それぞれの議院で検討することで、お互いの行き過ぎを抑制しあったり、補いあったりでき、より深い議論ができるわけです。

また、広く国民の意見を政策に反映するため、それぞれの権限や選挙制度などに違いを作っています。

衆議院はなるべく最新の民意を反映した政策を進めるという役割を持っています。

そのため、予算案や条約の承認、内閣総理大臣の指名などの重要な議決について、衆議院と参議院の意見が割れて調整がつかなかったときは衆議院の議決が優先されるといった権限を与えられています。これを「衆議院の優越」といいます。

一方の参議院は、中長期的な視点で慎重に政策を進めていく役割を持ちます。

そのため、ある程度年齢を重ね、さまざまな経験や知識を身につけた者を議員とすべく、被選挙権が30歳以上と衆議院の25歳より高く設定されています。

この役割の違いは、議員定数、任期にも表れています。まとめると、以下の表の通りです。


衆議院参議院
役割衆議院の優越があり、
参議院に比べて強い
衆議院に比べて弱い
被選挙権25歳以上30歳以上
議員定数465人248人
任期4年(満了前の解散有り)6年(満了前の解散無し)

よりタイムリーな民意を反映する役割を持つ衆議院は、人数も多く、任期も短くなっていることがわかります。

衆議院と参議院の違いについてより詳しくは以下のコラムにまとめていますので、宜しければご参照ください。

⇒一目でわかる衆議院と参議院の違い!定数、任期、選挙制度などの違いを一挙解説!

与党と野党、衆議院と参議院の違い

ここからは、この記事の本題でもある与党と野党も含めて考えてみましょう。

与党と野党の違いをおさらいすると、以下の通りでしたね。

与党:政権側につく政党の集まりで、政権を運営する

野党:政権側につかない政党の集まりで、政権を監視する

例えば、2019年の参議院選挙で当選した自由民主党のAという議員さんがいたとします。

この方は、参議院であり、与党の議員です。

その議員が衆議院・参議院のどちらにあたるかは、どちらの議員として立候補して当選したかによって決まります。また、その議員が与党・野党のどちらにあたるかは、どの政党に属しているかによって決まります。

与党と野党、衆議院と参議院は全くの別物であることがおわかりいただけたでしょうか。

まとめ:与党は政権を支え、野党は政権の暴走を抑える役割を持つ

政党は、私たち国民の意見を反映しつつ、健全な政権運営を目指すために不可欠な存在です。

与党は基本的に政権に味方し、政権の政策運営がスムーズになるように協力します。

野党は政権や与党の政策を監視し、その暴走を防ぐ役割を担っています。

与党と野党でしっかりとした議論がなされることで、日本の政治は安定するというわけです。