市議会議員の給料事情を詳しく知りたい!副業は可能?

「市議会議員は年収1000万円以上もらってる!」

というお話は聞いたことありませんか?

その一方で、

「生活に困窮している市議会議員もいるらしい」

というお話を聞いたことは?

この、一見すると矛盾に思う二つのお話はどちらも真実です。今回はなぜこのような矛盾が起こるのかも含めて一般的にはなかなか不透明な市議会議員の給料事情をお伝えします。

この記事を最後までお読みいただければ、市議会議員のお金事情をリアルに想像できるようになります。

市議会議員の給料は自治体の税収で大きく変わる

市議会議員の給料を議員報酬と言います。この議員報酬の出所は、みなさんがご想像の通り税金です。

これにより、冒頭でお伝えした「年収1000万円を超える市議会議員」と「生活に困窮する市議会議員」が生まれるわけです。

一般に、人口が多く税収が豊かな自治体の市議会議員の議員報酬は高額になり、その逆に高齢者が多く活気のない地方自治体の市議会議員の議員報酬は低く抑えられます

地方自治体の、人口ごとの平均的な議員報酬(月額)を見てみましょう。

・5万人未満:約32万円

・20万人以上〜30万人未満:約54万円

・50万人以上:約70万円

全国で1番多くの報酬を得ている横浜市(人口約375万人)の市議会議員の月収は約95万円。その一方で、全国的に見て1番報酬が少ない茨城県行方市(人口約35,000人)の市議会議員の月収は約25万円その差は70万円近くあります。

これを踏まえて、各地方自治体の市議会議員の給料の一例を見ていきましょう。市議会議員の給料は各自治体の条例によって明確に定められていますが、給与額は自治体によってバラつきがあることがおわかりいただけると思います。同じような人口数でも、住民の所得が多い自治体だと市議会議員の給料も高額になります。

市議会議員の給料一例:仙台市(人口:約100万人)

約84万円/月

市議会議員の給料一例:静岡市(人口:約70万人)

約66万円/月

市議会議員の給料一例:宇都宮市(人口:約52万人)

約67万円/月

市議会議員の給料一例:和歌山市(人口:約36万人)

約66万円/月

市議会議員の給料一例:川越市(人口:約35万人)

約58万円/月

市議会議員の給料一例:福井市(人口:約26万人)

約63万円/月

市議会議員の給料一例:沖縄市(人口:約14万人)

約43万円/月

市議会議員は給料以外に期末手当と政務活動費も支給される

市議会議員に支給されるのは議員報酬だけではありません。それ以外に一般企業でいう賞与(ボーナス)にあたる期末手当と、議員が活動する際の費用に充当される政務活動費が支給されます。

期末手当の平均は165万円と言われていますが、こちらも税収の多い自治体ではさらに高額が支給されます。たとえば、前述の横浜市の期末手当は約509万円で、神戸市の期末手当は約485万円です。

とはいえ、期末手当で500万円近く支給されているのは横浜市と神戸市ぐらいで、それ以外の自治体は多くとも400万円前半です。平均が165万円であることから、期末手当が100万円前半の自治体も数多く存在します。

政務活動費とは

市議会議員の政策調査研究などの活動のために支給される費用です。毎月の政務活動費の支給額も各自治体の条例によって定められており、こちらも自治体によってかなりの開きがあります。

横浜市のように月額55万円支給できる自治体もあれば、財政的に月額2万円しか支給できない網走市のような自治体も。こちらも自治体の財源によって支給額が変わるため、議員報酬が少ない自治体ほど政務活動費も捻出できない傾向が大きいです。

政務活動費の用途

政務活動費は主に以下の用途に使用されます。

・議員活動の範囲に関係する書籍等の購入

議員活動に必要な前提知識を身につけるために書籍の購入ができます。

・民間主催の議員研修会の参加費

最新事例や行政課題をテーマにした講演会には参加費がかかるものがあり、高い物だと15,000円程度かかります。

・先進地視察の諸費用(交通費・宿泊費等)

移動距離にもよりますが、交通費・宿泊費・食費を含めると政務活動費のなかで一番多く出費がかかる部分です。

・議会報告の制作・印刷・郵送

議会報告の制作から郵送まで、一括で選挙ポスター専門店などに注文することが多いのですが、目安として3,000部で5万~10万円(デザイン加工により価格は上下する)かかります。

・ホームページの制作・運営

ホームページの制作にかかる費用は最低でも5万円程度。一度制作したホームページの運営を業者に依頼した場合、年間の費用は5~15万円ほどです。

政務活動費は第二の報酬ではない

政務活動費の不正な私的流用が相次いだことから、マスコミによって政務活動費が「第二の報酬」として語られたこともありました。しかし現場で働く市議会議員はその表現に違和感を覚えると言います。

マスコミで市議会議員の給料を語るときに、政務活動費を議員報酬に合算した額を公表することがありますが、政務活動費は政策全般を勉強するための資金なので、分けて考えなければいけません。

民間主催の議員研修会に参加するだけでも1回15,000円程度かかりますし、議員報告の印刷・郵送も規模によっては10万円以上かかることもあります。視察の際には交通費・宿泊費が発生するので、あっという間に数万単位でお金がかかるでしょう。

また、政務活動費の使用用途は自治体によって規定されており、なかには町内会や自治会の会合での飲食に使用することを原則禁止している自治体もあります。

生活に困窮する市議会議員が生まれる理由

議員報酬に加えて期末手当・政務活動費が支給されるということを知り、なかには「生活が困窮するのはさすがにありえないのでは」とお考えになった方もいらっしゃるかもしれません。

潤沢な政務活動費が支給される一部の自治体に所属する市議会議員は、議員活動にかかる費用を政務活動費内でまかなえるでしょう。しかし、政務活動費が少ない自治体の市議会議員は、オーバーした部分をすべて自己負担することになります

市議会議員としての仕事をやればやるほど活動範囲は広がり、出席する会議や研修会も増えます。財源の乏しい自治体に所属する市議会議員は、政務活動費だけで議員活動の諸費用をまかなえなくなるので、自己負担をしながら活動をしています。

表向きは収入が多いように見えますが、実際には手元にほとんど残らないという市議会議員も多いのです。「清貧」という言葉がありますが、勉強熱心で活動に意欲的な市議会議員ほど生活が苦しいという現状があります。

一般的に、人口10万人未満の自治体の市議会議員は、議員として支給される給料だけでは生活が苦しいようです。そのため、市議会議員には副業をしている方も多いのです。

市議会議員は副業可能!ただし時間の融通が利く必要あり

市議会議員としての給料だけでは生活が成り立たないため、副業をしている市議会議員は多くいます。法律的にも市議会議員は公務員ではないため、副業を禁止されていません。

ただし、年間80日近くは年4回の定例会に参加しなければならず、閉会中には調査活動や議会・委員会としてのボランティア活動などを行うため、一般会社員と市議会議員を兼業するのは厳しいでしょう

そのため、市議会議員になるのは会社経営者、自営業、農業など自分で時間の融通を効かせることのできる職業に従事している方が多くなる傾向にあります。

また、副業の方が忙しくて市議会議員としての活動が疎かになってしまっては本末転倒なので、副業をする際にはバランスを考える必要があります。

まとめ:市議会議員の給料は自治体によって変わる。副業は可能!

市議会議員の給料を議員報酬と言いますが、議員報酬は市民の税金によって支払われるため、所属する自治体の税収によって大きく変わります。

議員の給料は議員報酬以外にも期末手当(ボーナス)、政務活動費が支給されるので悠々自適な生活を送っていると思いがちですが、実際には議員活動によって出ていくお金も相当な額になるため、意外と質素な生活をしている市議会議員は多いです。

なかには副業をしているケースも多々あります。市議会議員の副業としては、時間に融通の効く会社経営、自営業、農業が多いです。

市議会議員を目指す方は、自分が立候補しようと考えている市の議員報酬をしっかりと把握したうえで、副業が必要か、必要な場合は何をするか、事前にしっかりと考えておく必要がありますね。