衆議院議員の任期はいつまでなのでしょうか。「なんだか衆議院選挙の間隔ってまちまちな気がする。本来の任期はどれくらいなんだ?」と疑問を持たれたことはありませんか?
ここではそんな疑問にお答えいたします。また衆議院と参議院の違いや、任期満了した場合の国会の流れについても詳しく解説。
この記事を読めば、衆議院と参議院の違いを踏まえ、任期満了後の選挙の流れがわかるようになります。ぜひ最後までご覧になってください。
目次
衆議院議員に当選してから任期満了日までの期間
衆議院議員の任期の始まりと終わり
衆議院議員の任期はいつから始まるのでしょうか?
公職選挙法の第256条には「任期満了による総選挙が任期満了の日より前に行われたときは前任者の任期満了日の翌日、それ以外(解散時を含む)は総選挙の期日」と記されています。
何か小難しく書いてありますが、わかりやすくまとめるとこうです。
- 前任者がいる間に選挙が終わった時→前任者の任期が満了した次の日から
- 解散含めすでに前任者がいない時→当選した日から
他の参議院議員や市議会議員なども基本的にはこの原則です。それぞれについて詳しくは公職選挙法の第256条から259条で規定されています。
そして着任日から4年が、衆議院議員の任期です。
参議院は任期が6年で、3年ごとに議員の半分ずつを選挙で選びます。それに比べると衆議院の方が短いですし、全議員を一斉に入れ替えるので、衆議院の方がより民意を反映していると言われるわけです。
2019年7月現在の衆議院議員の任期満了日
では今現在務められている衆議院議員の任期はいつまでなのでしょうか。
前回の衆議院議員総選挙は2017年10月22日に行われました。なので4年後の2021年10月21日が、今の衆議院議員の任期満了日です。ただしあくまでも、4年間最後まで務められた場合の話です。
この後詳しく見ますが、実際には任期前に解散・総選挙となるのがほとんどです。ちなみに前回の総選挙も解散が原因ですが、その時の解散理由を安倍総理は『消費税10%への増税の是非』『北朝鮮情勢への対応』と述べていました。
衆議院議員の任期満了は戦後たったの1回
戦後の日本国憲法下において、衆議院議員総選挙は今までに26回開催されてきました。そのうち任期満了による総選挙は、なんとたったの1回なのです。割合にすると3.8%という驚きの低さ。
1976年12月5日三木内閣の時に行われた選挙ですから、もう40年以上も前です。ちなみにこの時は前任者の任期が12月9日までだったので、新しく当選した議員方の任期は12月10日からでした。
任期が終わる前に解散総選挙が行われる理由
先ほど任期満了による総選挙は1回だけと書きましたが、では残りの25回は、なぜ衆議院が解散され総選挙の運びとなったのでしょうか。
解散が行われるのは次の3つの場合です。
- 衆議院で内閣不信任決議が可決された場合
- 衆議院で内閣信任決議が否決された場合
- 内閣総理大臣が必要と判断した場合
なお、戦後の解散のうちほとんどが③で計21回、①は4回、②は0回となっています。
では、順に見て行きましょう。
①衆議院で内閣不信任決議が可決された場合
内閣不信任決議とは、野党が現在の内閣に対して信任せず退陣を要求する決議のことです。内閣支持率が低下している時など、野党側が現内閣を追い詰めるときに使う最終手段です。
なぜなら内閣不信任決議が可決された場合、10日以内に衆議院が解散されなければ内閣は総辞職しなければならないからです。
ただ実際には決議をするのにも細かな条件があったり、可決するためには過半数の賛成が必要だったりするのですがそもそも与党が過半数を占めていることが多いため、なかなか内閣不信任決議を通すのは難しいのです。
②衆議院で内閣信任決議が否決された場合
②内閣信任決議は①と正反対であり、与党側が内閣を認めるよう提出する議決のことです。しかし、実際に提出されることはほとんどありません。出す必要がないのです。というのも、国会の投票で内閣総理大臣は指名されますが、この指名は衆議院から信任を受けていることが前提とされるからです。
行政を任せられないような人を、最初からわざわざ総理に選んだりしませんよね?それに①でも述べましたように、基本的に与党が過半数を占めているため、なおさら内閣信任議決を取る必要性がないのです。
これら①と②のことが憲法第69条に記載されていることから①と②による解散のことを「69条解散」と呼ばれたりもします。
③内閣総理大臣が必要と判断した場合
最後に③による解散は、主に内閣が何か大きな政策を仕掛けようとする際や、ねじれ国会(衆参の一方で与党が議席の過半数、もう一方で野党が議席の過半数を獲得している状態)で政策の審議が思うように進まない場合に行われます。
根底には内閣の思うように政策を進めたいとの思惑があるので、解散は大抵与党の支持率が上がっている時など自分たちに勝機が見込める時に行われます。
要は、内閣総理大臣の戦略的解散です。
これら3つの理由により解散されるので、衆議院議員は任期4年を待たずして辞めなければならないことがほとんどです。
過去のデータから見る実質在任期間
当選した総選挙 | 在任期間 | 当選した総選挙 | 在任期間 |
第23回 | 約1年8ヵ月 | 第36回 | 約3年5ヵ月 |
第24回 | 約2年7ヵ月 | 第37回 | 約2年6ヵ月 |
第25回 | 約5ヵ月 | 第38回 | 約3年6ヵ月 |
第26回 | 約1年9ヵ月 | 第39回 | 約3年4ヵ月 |
第27回 | 約3年2ヵ月 | 第40回 | 約3年2ヵ月 |
第28回 | 約2年5ヵ月 | 第41回 | 約3年8ヵ月 |
第29回 | 約2年11ヵ月 | 第42回 | 約2年8ヵ月 |
第30回 | 約3年1ヵ月 | 第43回 | 約1年9ヵ月 |
第31回 | 約2年10ヵ月 | 第44回 | 約3年11ヵ月 |
第32回 | 約2年11ヵ月 | 第45回 | 約3年3ヵ月 |
第33回 | 4年(任期満了) | 第46回 | 約1年11ヵ月 |
第34回 | 約2年9ヵ月 | 第47回 | 約2年9ヵ月 |
第35回 | 約7ヵ月 | 第48回 | 約1年9ヵ月 (2019年7月現在) |
任期満了を迎えることがほとんどないと書きましたが、では実際の在任期間はどのくらいだったのでしょうか。表にまとめたものがこちらです。
総選挙の回数が第23回から数えられているのは、戦後初の総選挙がこの時だからです。
任期満了を除けば、最長が約3年11ヵ月と任期満了目前にしての解散、最短は約5ヵ月と半年も経たないうちに解散されています。これら全ての平均が約2年8ヵ月。
衆議院議員の任期が4年とされていながら、実際は1年以上も任期を残して辞めることが大半なのです。
衆議院議員の任期満了時の国会の流れ
とは言え、実際に任期満了を迎えた際の選挙の流れがどうなるかもしっかりと押さえておきましょう。
まず任期満了時に行われる総選挙のタイミングは国会がいつ閉会するかによって変わります。その後、最初に開かれる国会において内閣は総辞職し、新たな内閣が作られることになるのです。
ではそれぞれ詳しく見て行きましょう。
任期満了から総選挙までの流れ
選挙が行われるべき時期は公職選挙法によって以下の表のように定められています。
国会閉会が任期満了日の | 選挙が行われるのが | 選挙を行うべき期間 |
54日以上前 | 任期満了前 | 任期満了日~30日以内 |
53日~31日前 | 任期満了前 | 国会閉会~ |
30日~0日前 | 任期満了後 | 24日~30日以内 |
翌日以降 (任期満了日が国会閉会日) | 任期満了後 | 24日~30日以内 |
国会閉会が任期満了日より31日以上前であれば、在職中の選挙に。任期満了日を含め30日以内であれば、失職後の選挙となります。
総選挙後最初に開かれる国会
衆議院議員の任期満了による総選挙が行われた場合、選挙後30日以内に臨時会を開かなければならないと国会法第2条で決められています。臨時会の開催期間は衆参の両院によって取り決められますが、議決が分かれた時は衆議院の優越により衆議院での案が採用されます。
内閣総辞職から新内閣発足まで
今まで内閣総理大臣を指名していた衆議院が総入れ替えになるので、当然内閣も総辞職することになります。ただしそのタイミングは、衆議院が解散する時ではなく、衆議院議員総選挙後が終わった後初めて国会が開かれた時と定められています。
仮に内閣総理大臣が解散総選挙で落選したとしても、落選した瞬間に首相としての地位を失うわけではなくて、最初の臨時会が開かれ内閣総辞職するまではその任に就いたままなのです。
それから新しい内閣が組まれることになります。
新内閣発足までの流れは下記の通り。
- 総選挙後、最初に開かれる国会で新たな内閣総理大臣を指名する。
- 天皇が国会で指名された内閣総理大臣を任命する。
- 内閣総理大臣が国務大臣を任命する。
- 天皇が国務大臣の任命を認証する。→この時点で内閣は完成する。
- 内閣総理大臣が国務大臣の職を指定する。
一般的には①と②の間で、新しい内閣総理大臣による国務大臣の人選が先に行われます。内閣総理大臣の任命が終わってから、国務大臣を任命して内閣が出来上がるまでの期間はなるべく短い方が望ましいとされている為です。
このようにして総選挙を経た後、新しい内閣が作られ政治が動かされていくのです。
まとめ:衆議院の任期は4年だが実質の在任期間は3年弱
以上の内容をまとめるとこうです。
- 衆議院の任期は4年。ただし、4年経つ前に解散総選挙となることが大半
- 衆議院の実質任期は約2年8ヵ月
- 解散されるのは、内閣が信任されなかった時か内閣総理大臣が必要と判断した時
- 任期満了時の選挙は、国会がいつ閉会するかによってタイミングが変わる
- 総選挙後最初の国会で内閣は総辞職し、新しい内閣が組まれる
衆議院の任期自体は4年ですが、政治家の様々な思惑により実際には3年弱で終わることが大半でした。
衆議院の方が参議院よりも任期が短いからこそ、よりその時々の国民の声を政治に反映させることができるのです。もしこれをご覧で国政への進出を考えられてて、なるべく短期間で人々の声を行政に反映したいという方は、ぜひ衆議院議員として立候補してみてくださいね。